プロスポーツにおいて、ファンやサポーターの存在は必要不可欠です。サッカーも例外ではありません。
そもそも、観戦や応援を楽しんでくれる人がいなければ、僕たちの仕事は成立しないのです。僕自身も、Jリーガーとして短くない時間を過ごしてきましたが、その重要性は痛いほど理解しています。
そこで、そんな心強いサポーターと我々選手が良好な関係を保つために必要だと感じることをテーマにお話していきます。
重要ポイント10ヶ条
サポーターに愛される存在になるために、選手が意識すべき事を中心にまとめてました。中には、「サポーターの方へのお願い」的な要素も含まれています。
お互いの関係性を固く強いものにするために、参考にしていただけたら幸いです。
自分の存在意義の認識
まずは一人一人が「Jリーガー」の存在意義を考えることから始まると考えています。もっと言えば、この仕事がなぜ存在し、どうして必要とされるのかを知る必要があります。
自分の存在意義が認識出来れば、自ずと取るべき行動が見えてきて、それが結果的にファンやサポーターの方々へのメッセージとなるのではないかと感じています。
サッカー選手を続けていると、順風満帆にはいかない時間も沢山あります。そういう時こと、自分の「価値」と向き合う必要があると思います。
過去には、サッカーを続けていて本当に良かったと思える瞬間が沢山ありました。中でも、アスリートにとってこれほどまでに存在意義を感じられることはないと感じたエピソードを記事にしています。
お互いを知る
これは対人関係の全てにおいて言えることかもしれませんが、両者が上手に付き合っていくためには「知る」ことが必要です。相手は何を求めていて、何をされると幸せを感じ、何をすると悲しむのかを考えなければなりません。
「知らない」状況では、両者の間に勘違いや思い過ごしが生じることもあります。実際に起きた不和であれば百歩譲っても「ズレ」が原因で関係にヒビが入ってしまうのは非常にもったいないと感じます。
お互いを知るための方法には次の項目で触れますが、積極的に相手を知ろうとする姿勢が重要だと考えます。
このブログを始めた理由も「サッカー選手のことをより深く知ってもらいたい」という気持ちからでした。皆様の質問に答える記事も配信していますので参考にしていただけたらと思います。
コミュニケーション
前項の「知る」を実現するためには、コミュニケーションが必要不可欠です。
家族や友人と違って、日常生活を共に過ごすわけではないので、コミュニケーションを図ることは簡単ではありません。ましてやコロナ禍において接触が制限されている状況では、その難易度が上がっていると感じます。
それでも方法はいくつかあります。ファンレターなどで気持ちを伝えてもらったり、最近ではSNSで応援メッセージを送っていただくことも増えました。
双方向かつリアルタイムのコミュニケーションは難しいまでも、ファンやサポーターの方々の想いを知ることは可能です。
プロアスリートである以上、時には厳しい意見や反応を受けることも覚悟しています。本気で気持ちを伝えられる関係性は、信頼関係を築く上で非常に大切だと感じています。
また、少しずつですがコロナ以前の対応に戻そうとする動きが出始める中で、徐々に直接会話を交わせるシチュエーションも復活しつつあります。練習見学やイベントなども増えてくれば、ますますコミュニケーションが取りやすくなると思っています。
もしかすると、日常生活の中でも選手のことを見かけることがあるかもしれません。個人的には、街で声をかけてもらえるのは嬉しく感じますが、時と場合によっては対応できない場合もあるのでご理解いただければと思います。
選手が自分の想いや意見を知ってもらうにも、SNSは有効です。試合の感想やサポーターへの感謝はもちろん、何気ない日常的な発信でも、想像以上にファンの方は喜んで下さるように感じています。
目標の共有
ここからは、より細かい部分へのアプローチになります。
まずはクラブや個人の目標をサポーターの方と共有することです。特にクラブとしての目標の明確化は、サポーターの方々にとっても必須だと感じています。
僕らが「なぜ戦うのか」を大事にするのと同じように、サポーターの方にも「応援する理由」があるはずです。その一つにクラブの「目標」があると感じます。同じゴールに向かって共に戦うためにも、目標の明確化は重要です。
個人においても、自分の目標や夢を知ってもらうだけでも、後押しして下さる人の支えを強く感じられます。当然ながら勝敗のあるスポーツなので、思うような結果が出ないこともあります。
それでも、目標に向かって走り続けた末の結果と、そうでないのでは、応援して下さる方々の気持ちは全く違うものになるのではないかと思っています。
クラブへの愛を持つ
自分が愛される選手になるためには、まずは自分がクラブを大切に思うことが重要です。その姿勢は、自分たちが思う以上に観ている人たちには伝わるような気がしています。
チームスポーツである以上、チームのために動ける選手が必要とされます。
クラブの歴史やのビジョンを理解し、忠誠心を持って戦える選手こそ、結果的にファンやサポーターから愛される選手になるのではないかと考えています。
気持ちを表現する
この世界で生きていて感じることがあります。それは「気持ちを表現できる」選手は特に愛されるということです。
プロアスリートである以上、試合に勝ちたいと思う気持ちは誰しもが持っているはずです。でも、それをプレーで表現することは簡単ではありません。だからこそ、気持ちを全面に出せる選手は愛されるのです。
選手のキャラクターやプレースタイルによってもその難易度は異なるので一概には言えませんが、観ている人に伝わるプレーが出来る選手は、それだけで特別な能力の持ち主です。
感謝を忘れない
当たり前のようで、時々忘れてしまいそうになることがあります。
最初の項でも話しましたが、僕たちの仕事が成立する背景には沢山の方々のサポートが存在しています。コロナ禍での無観客試合では、サポーターの方々の有り難みを再確認させられました。
トレーニングやゲームに夢中になっていると見落としがちですが、周りを見渡すと大勢の方の準備があって僕たちがプレー出来ていることに気がつきます。また、僕たちの見えないところでも尽力して下さる方が沢山います。
そういった背景に感謝する気持ちを常に無くしてはならないと感じています。感謝の気持ちを持ち、伝えられる時には積極的に伝えることが当たり前に出来る選手は、誰からも愛される選手になれると思っています。
不祥事を起こさない
ここまでは「何をすべきか」という話でしたが「絶対にすべきではないこと」もあります。それの一つが不祥事です。
プロサッカー選手は良くも悪くも注目され、大きなトピックがあればニュースにもなり得ます。一度でも不祥事を起こしてしまうと、それまで積み上げてきた信用を台無しにしてしまいます。応援しようという気持ちも失われてしまうかもしれません。
SNSの普及により誰にでもメディア的な発信が可能になっていて、その情報は一瞬で広がってしまいます。その影響力がポジティブな方向に使われれば良いのですが、悪い方向に出てしまうと悲しい結末を迎えてしまいます。
これまでにも増して、選手のリスクマネジメント能力は必須だと感じます。この辺りの感覚は、年齢や時代背景にも大きく影響を受けるような気がしています。
嘘をつかない
前項に付随する形にはなりますが、どんな状況であれ「嘘をつかない」ことが大切です。
この業界に限ったことではないですが、トラブル発生時に自分の身を守ろうと嘘をついてしまうケースがありますが、結果的には事態を悪化させる場合が多いように感じます。取り繕った自分は、いつか化けの皮が剥がれます。
自分をプロデュースする能力は必要ですが、大事な局面で嘘をつくことはやめた方が良いと考えています。
結果にコミットする
最後は何と言っても「結果」です。意識してすぐに変えられるものではないので最後にしましたが、だからこそ結果を出せる選手は愛されます。
言うまでもなく勝負の世界です。応援している方々も「勝利」を見たくて僕たちに期待してくれます。その期待に応えることが選手としては一番の使命です。
色々と心掛けるべきことを話してきましたが、選手として結果と向き合い続けなくてはなりません。
勝つチームがあれば負けるチームがあります。優勝するチームがあれば、最下位が存在します。この現実を受け入れ、目標達成のために力を尽くすせる選手が必要とされ、信頼されるのだと感じています。
まとめ
今回は、選手とサポーターが良好な関係を築いていくために必要な要素についてお話しました。選手として信頼され、愛されるためにも意識したいポイントです。
互いに信頼し合い、強いクラブを目指していくために少しでも参考になることがあれば幸いです。是非サポーターの方々にも選手のことを知っていただき、コミュニケーションを取りながら気持ち良く応援してもらえればと思います。
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